退職金の税負担を軽くする退職所得控除、勤続年数の数え方、一般退職手当等の税額計算を例付きで解説します。
退職金は給与と同じように全額へそのまま税率を掛けるのではなく、原則として退職所得としてほかの所得と分離して税額を計算します。長年の勤務に対する一時金という性質を踏まえ、退職所得控除と、控除後の金額を原則2分の1にする仕組みが設けられています。ただし、役員等としての勤続年数が5年以下の場合や、短期勤続年数に対応する退職手当等では、2分の1計算が制限されることがあります。
一般的な退職所得控除は、勤続年数20年以下なら40万円×勤続年数、20年を超えるなら800万円+70万円×(勤続年数-20年)です。計算結果が80万円未満なら80万円となります。勤続年数に1年未満の端数がある場合は1年に切り上げます。たとえば10年2か月なら11年として扱います。障害が直接の原因で退職した場合や、同じ年・近い年に複数の退職金や確定拠出年金の一時金を受け取る場合は、控除計算が変わることがあります。
一例として、一般の従業員Aさんが勤続15年で退職金800万円を受け取るとします。退職所得控除は40万円×15年=600万円です。一般退職手当等として2分の1計算が使える前提なら、課税退職所得は(800万円-600万円)×1/2=100万円となります。この100万円に対する所得税は5%で5万円、復興特別所得税は所得税額の2.1%で1,050円、住民税は一般に10%で10万円となり、合計は15万1,050円です。端数処理やほかの退職手当との重複がないという条件を置いた制度説明用の計算で、すべての人の税額を示すものではありません。
勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、勤務先が税額を計算して源泉徴収するため、通常は退職金だけを理由に確定申告する必要はありません。提出していない場合は、支給額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算します。退職金が複数ある、確定拠出年金の一時金を受け取る、勤続期間が重なるなどの場合は計算が複雑です。受取時期を決める前に、勤務先の担当部署、税務署、税理士などへ確認してください。
住民税についても、退職所得は原則として退職金の支払時に特別徴収され、翌年度の給与に対する住民税とは分けて扱われます。退職後に通知が来ないから非課税だった、と単純に判断しないようにしましょう。また、退職所得控除の大きさだけを見て受取方法を決めるのも危険です。企業年金や確定拠出年金を年金形式で受け取れば雑所得となるなど、一時金とは所得区分が変わります。税金以外の生活資金需要も含め、受取方法と時期を比較する必要があります。